あぁ我が酒呑み人生よ

お酒と読書とお酒

酒場のとある情景🏮〜酒場の恋〔後編〕〜

それでは〔前編〕の続きをお届けする。

 

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時間は少し遡り、LINEのやりとりを振り返る。

みゆきちゃんの愚痴が一気に流れてきた辺り。

 

 

「ちょっと嫌なことがあってさ…」

「今日は飲みたい気分でさ」

「というか、今日は酔いたい‼︎」

「あー腹立つっ‼︎」…云々

 

 

 

明らかに「何か」があった匂いを放っている。

さすがに私も心配(というか単純に気)になり、

「何かあったんですか?」と返す。

少しの沈黙の後に、

「もうコージさんとは飲まない!」と返ってきた。

…… コージさんとは飲まない……か、

 

 

 

 

じつはここで私は返信を入れている。

「え?コージさんと何があったんですか?」 

こんな野暮な質問をしても良いのだろうか…

それでも、聞いてほしいから連絡が来たのだ。

と、意を決して返信したのだ。

割とすんなり既読になり、まずは一息をつく。
 

 


 
「あの人、みゆきのことなんか興味ないみたい」

明らかに今まではトーンが違う返信に戸惑う…

哀しさとも、諦めとも、とれるその言葉。

なんとか隠そうとしているのだろうが、

怒りの感情が洩れ出し、私の心をチクチクとつつく。

こういうパターンは何度か経験があるが、

とりあえず、酔わないと聴く方も大変だ。

グラスを手に取ると、キッチンに立ち、

お代わりの酒を少し濃い目に入れた。


 
 


 
キッチンに立ち、少し間をとったからか、

状況をおおかた理解することが出来た。

いや、理解出来たというよりも、

心のどこかで予想していたことが現実になった。

と言った方が正しい。

コージさんとは長い付き合いになるのだが、

こういう女性にとって不幸な結末を幾度か、

実際に目にしたことがあるからだ。

 
 
 
 

 

一緒に過ごした時間的な長さと比例して、

その人の人となりをより深く知っていくーーー

それが普通の所謂、人付き合いだと思うが、

呑み仲間に関しては、必ずしもそうではない。

私の経験上だが、10年来の付き合いになっても、

お互いに要らぬ詮索をせぬまま、

カウンターで2人、杯を傾けることもある。

 

 

 

 

その顕著な例がコージさんである。

名前はもちろん知っているが、

仕事やプライベートの深い話はあまり知らない。

ただ経験上、ぼんやりとだが気付いていることがある。

コージさんは本気で恋愛していない……

 

 

 

 

 

私の方で止めていたLINEのやり取り。

あんな言葉の後に気の利いた返信ができるほど、

私は人生経験、こと恋愛に関しては豊富ではない。

「既読」というシステムが言葉選びに悩む私を、

じわりじわりと土俵際まで追いやっていく。

まだ濃い目の酒が胃の方に居座っているが、

酒を呑むペースだけが早くなっていく…

だが、考えは一向に纏まってこない。

 

 

 

 

私は考えに迷い、行き詰まると頼りにする、

作家 村上龍の言葉がある。

「答えはいつだってシンプル」という言葉だ。

読んで字の如く、複雑な状況な時に限って、

答えはシンプルな所にあるという意味だ。

この場面でも、場渡り的な励ましではなく、

私なりのコージさんの人間観を伝えることにした。

そして、彼は「恋愛を遠ざけている節がある」と、

最後に付け加えておくことにした。

 

 

 

 

彼女からの返信は思いがけず早かった。

「やっぱり、そうだよね…」そして、

「ありがとう」と一言だけ。

お互い、それ以上のやり取りはせずに、

私は目の前にある残った酒をただ呑んだ。

本気になる方が悪いのか、

本気にさせる方が悪いのか、

少し呑みすぎたのだろうか。なぜか哀しかった。