神戸三宮 創作家庭料理 ゑん屋 で地元播磨の酒を嗜む
〔守破離〕を出た私たち。
さて、どこに行きますか、と三宮の街を歩き出す。
祝日の前日とあっで街は賑やかだ。
生田新道沿いの呼び込みに辟易しながら、
当てのない酔っ払いが2人、
夜の闇に身を隠すようにひっそりと歩く。
一緒にいるN川氏は私より一回り上の独身貴族だ。
そして、ほぼ毎日三宮界隈で飲んでいるので、
声をかけるといつも一緒に飲んで頂けるし、
何よりお店に詳しいので非常に有難い。
学生時代からの付き合いなので、
もう10年来の飲み仲間になるのか…
なんて酒呑みが感慨に浸るわけもなく、
近くにしますかと、時々お邪魔している
創作家庭料理 〔ゑん屋〕 さんに向かう。
昔、かぶら屋さんがあった手前ぐらいのビル。
こちらも階段を上り三階へ。
カウンターだけの落ち着いた店内に、
テキパキと働く姿が印象的な女将さんが1人。
2組ほど先客がおり、皆さま日本酒を呑んでいる。
私たちはL字カウンターの奥に座り呑み始める。
まずは焼酎「中々」の水割りから。
この辺りで、仕事終わりの飲み仲間が合流。
同い年の女性なのだがN川氏とも共通の知人だ。
彼女は仕事上の役職が「取締役」なので、
「取締役」と呼ぶことにする。
取締役がまだご飯を食べていないみたいなので、
本日のおばんざい4種と串カツをお願いする。
こちらは丁寧に揚げてくれる串カツが旨いのだ。
〔ゑん屋〕さんは焼酎も日本酒も品揃えが豊富。
日本酒は兵庫を中心に、西日本が多い印象。
そしえ、値段もお手頃に頂けるので有難い。
というわけで、まずは「船中八策」を頂く。
高知を代表する1本。超辛口。旨いなぁ。
お次は「奥播磨」をお願いする。
兵庫は播州地方の酒である。
少し気になって「播州」について調べてみた。
「播州」とは「播磨」の異称だそうだ。
wiki先生の「播磨」を引用したい。
明治維新の直前の領域は現在以下のようになっている。現在の神戸市域においては、須磨区を境に東部(長田区・兵庫区・中央区・灘区・東灘区の全域および須磨区・北区のそれぞれ大部分)が摂津国、西部(垂水区・西区のそれぞれ全域と北区・須磨区のそれぞれ一部)が播磨国であった。
全域
兵庫県神戸市垂水区・西区・姫路市・明石市・相生市・加古川市・三木市・高砂市・小野市・加西市・宍粟市・たつの市・西脇市・加東市・多可郡・加古郡・神崎郡・揖保郡・赤穂郡
一部のみ
兵庫県神戸市須磨区(神の谷・北落合三丁目・北落合四丁目・菅の台・西落合・竜が台二丁目・竜が台三丁目・竜が台四丁目・竜が台五丁目・緑台・弥栄台)・北区(淡河町淡河・淡河町勝雄・淡河町北僧尾・淡河町北畑・淡河町木津・淡河町行原・淡河町神田・淡河町中山・淡河町野瀬・淡河町萩原・淡河町東畑・淡河町神影・淡河町南僧尾)・赤穂市(備前国の部分を除く)・朝来市(生野町真弓・生野町川尻・生野町栃原)・佐用郡(美作国の部分を除く)当該地域の2010年国勢調査による人口は230万4449人(男111万3494人/女119万0955人)、世帯数は86万8208世帯、面積は3649.75km²、人口密度は631.4人/km²[1]。
あれ、少し自分の思っていたイメージと違う。
私の思っていた「播州」は姫路、たつの、赤穂…
要するに明石よりもっと西側と考えていたが、
バリバリ私が育った須磨区も入っているではないか。
そういう意味でかなり広義だが「奥播磨」は、
「地元の酒」と呼ぶに相応しいといえる…かな。
無論、地元に酒蔵があったわけではないが…
一方で、いま我が実家のある酒所の東灘は、
「摂津国」になるわけだ。
(最近、大人の事情で実家が引っ越しました☆)
元々は別れていたという事実を今更知るという…
いと羞ずかし…
ここからは飛躍もあるが自分なりの考えを書く。
たしかに、神戸市近郊住民の心の深層には、
この「国の違い」が刻まれている気がする。
それははっきりしたものではないが、
普段は明治以降に新しく線引きされた区間が、
機能しているので表に出てくることはない。
一例を多少の異論を承知で言うならば、
播磨(播州)側の人間はあまり灘の酒を、
普段から飲まないというか、
あまり灘を意識していないように思う。
なぜなら、この日呑んだ「奥播磨」以外にも
美味しいお酒が、明石や赤穂などにもあるし、
さらに美味しい食が沢山あるからである。
話があらぬ方向に進みそうなので軌道修正。
この〔ゑん屋〕さんは、中村よお著
「肴のある旅 神戸居酒屋巡回記」で、
紹介されていたのがお邪魔した切欠である。
この本は上司から薦められて読んだが、
今回の話の流れでいくと「摂津国」側のお店が多い。
興味がある方は読んでみては如何だろうか。
〔ゑん屋〕のカウンターで地元の酒を呑む。
隣では飲み仲間が2人で盛り上がっている。
私は、快活な女将さんがテキパキと働く姿を、
ぼんやりと眺めながら、美味しいツマミと共に、
ちびちびと「奥播磨」を飲み進めていく。
もうこれで十分。良い店には良い空気が流れている。